特に田んぼの畔やお墓の周辺によく見かける。なぜかというと、彼岸花の球根には毒があり、田んぼを荒らすネズミやモグラ、虫などの被害を防ぐため。墓地で多くみられるのは、土葬の遺体をネズミやモグラから守るためだとされており昔の人の知恵はすごい。
彼岸花の姿は、30〜50センチ程の花茎の先に、強く反り返った6枚の花びらを持った鮮やかな紅色の花が5〜7個つき、やや偏平な球状を形作っている。それぞれの花からは6枚の雄しべと1本の雌しべがまるで飾りのように上方に長く突き出している。
彼岸花は、別名 曼殊沙華(まんじゅしゃか、あるいはまんじゅしゃげ)とも呼ばれ、サンスクリット語で天界に咲く花という意味らしい。おめでたいことが起こる兆しに赤い花が天から降ってくるという仏教の経典からきているそうだ。そんな真っ赤な彼岸花も、稲刈りを前にした田んぼのあぜ道ではどうすることもできず、草刈り機で一気に刈られてしまう。さみしい限りである。
しかし、今年の秋は違う。毎年彼岸の時期には勝ち誇ったように咲いていたあの彼岸花が、ほとんど咲いていないのである。田んぼのあぜ道は緑一色である。あの真紅の彼岸花はどこに行ってしまったのだろう。
彼岸花の花芽の形成は、地温が30度以下、気温は約20度位が適温らしい。今年の彼岸頃の気温はまだ高く、花芽の形成が遅れていたようだ。
ところが彼岸すぎると急に気温が下がり、涼しい秋風が吹きだした。「暑さ寒さも彼岸まで」ということばがあるが、彼岸が過ぎてやっと花茎が伸びだした。その先には真っ赤な花弁が膨らんでいる。もうしばらくすると、田んぼの畔道やあたり一面、真っ赤な色に染まるだろう。おめでたいことが起こる兆しの赤い花。
赤い花なら曼珠沙華
阿蘭陀(おらんだ)屋敷に雨が降る〜
(作詞:梅木三郎『長崎物語』より引用)
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